まえがき

 我々はいまAIルネッサンスの時代を迎えています。当事者はもちろんのこと、直接関係のない人々も誰もがこの波に乗ろうとしています。おそらく、本書を手に取った皆さんも同じことを考えているのではないでしょうか。世の中にはすでにディープラーニングに関する書籍があふれていますが、あえて本書が出版されたのには理由があります。

 我々は2013年からディープラーニングに携わってきました。MicrosoftやNVIDIA、AmazonそしてSquareで製品を開発しました。この間に、業界を取り巻く状況は劇的に変化しました。最先端の研究成果が次々と発表されますが、ツールはいつまでも成熟しないというのが現実でした。

 コミュニティの中で成長し学んでゆく中で、我々はあることに気づきました。研究の成果をエンドユーザーへと還元し、日常的に利用してもらえるようにするための明確な指針が欠如しています。エンドユーザーはいつも、ブラウザやスマートフォンあるいはエッジデバイスの前に向かっています。そしてプログラミングや実験を行ったり、ブログやGitHubのイシューやStack Overflowでの問答を検索したり、ソフトウェアの作者にメールを送ったりしていることでしょう。求められているのは秘伝のような知識や、たまに得られるアハ体験です。出回っている書籍はいずれも、理論や特定のツールに偏っています。これらを読んでも、子供だましのおもちゃしか作れないでしょう。

 理論と実践との間にあるギャップを埋めるために、我々はまず講演活動から始めました。特に実用的なアプリケーションに焦点を絞って、人工知能に関する研究成果をエンドユーザーにも伝えようと試みました。動機付けになるような具体例を示すとともに、スキルレベル(趣味としての利用からGoogleレベルの大企業のエンジニアまで、多岐にわたります)に応じた課題や、ディープラーニングを実運用環境にデプロイする際に苦労する点についても紹介しました。これらの講演は、初心者にも上級者にも好評でした。 ...

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