はじめに

AIのためになぜ分析スキルが必要なのか

2010年代後半のソーシャルメディアを飾った見出しや解説記事によれば、自動化と価値創出を約束する人工知能(AI)の時代がついにやってきたらしい。2005年前後というそれほど古くない時期に始まったビッグデータ革命でも、同じような約束が飛び交った。そして、一部の優秀な企業がAIドリブン、データドリブンのビジネスモデルで業界破壊を実現したことは確かだが、多くの企業はまだAIの約束を現実のものとすることができていない。

このように計測可能な結果が生まれていない理由はさまざまに説明されている(そして、どれもある程度は正しい)が、本書が前面に押し出しているのは、これらの新技術を補完する分析スキルの全般的な欠如である。

本書の大前提は、企業はデータや予測テクノロジーだけではなく、意思決定を下すことによって価値を創出するということである。それを意識しなくても、ビッグデータ/AI革命に便乗してAI/データドリブンで意思決定する現代的な企業に変身すれば、系統的、かつスケーラブルによりよい選択ができるようになっていく。

しかし、よりよい意思決定をするためには、まず正しい問いを立てなければならない。そうすると、記述的、予測的な分析に留まらず、処方的な行動指針を立てるところまで否応なく進まざるを得なくなる。最初の数章では、これらの概念を明確化するとともに、この種の分析に適したより良いビジネス上の問いの立て方を説明する。そのあとの部分では、意思決定の構造に進む。まず達成したい帰結、成果を明らかにしてから、そのために取れるアクションを逆算するという方法を説明し、不確実性や因果関係の処理によって生み出される問題やチャンスを詳しく論じる。

最後に、処方的な問いの立て方と解き方を学ぶ。 ...

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