第1章マネジメントの基本

人を束ねる秘訣は、俺のことが好きなのか嫌いなのか、まだ判断のつかないでいる連中から、俺を目の敵にしてるやつらを遠ざけておくことさ。

ケーシー・ステンゲル

多分あなたは「できる上司」になりたくてこの本を読んでくださっているのでしょう。ですがそもそも「できる上司」がどういうものか、ご存知ですか。「できる上司」のもとで働いた経験は? もしも誰かに正面切って「『できる上司』に何を期待しますか?」と訊かれたら、答えられますか。

1.1 上司に何を求めるか

誰しも管理マネジメントというものに生まれて初めて接する時には「管理される側」であるのが普通ですが、私たちはそうやって「管理された体験」を土台に、自分なりのマネジメント哲学を築き上げていくものです。私がこれまでに見聞きした限りでは、今までキャリアを積んで来た中で「できる上司」に恵まれた経験など一度もない、という人がいます(残念なことです)。私の友人たちも、よかれと思って目をつぶる「無策の策」を取るのが過去最高の上司だ、などと言ってのけます──何をすべきかなんて当のエンジニアが先刻承知、「できた上司」ならすべて一任してくれる、のだそうです。中でも極端だったのは、上司とのミーティングが6ヵ月間でなんとわずか2回、そのうちの1回は昇進を告げられた時、というケースでした。

とはいえ、他の選択肢を考え合わせると「無策の策」を取る上司もそれほど悪くはないように思えます。他の選択肢とは、たとえばこんな職務怠慢な上司のこと──部下が助けを必要としているのに知らんぷり、部下の不安など、どこ吹く風の上司、あるいは部下とは一切顔を合わせようとしない上司、フィードバックを一切くれず、それでいて不意に「君は我々の期待に応えられていない」とか「昇進する資格がない」とか言い出す上司。逆に細かすぎる上司ももちろんいます。あなたのすること為すこと何につけ事細かに問いただす上に、何であれ決定権は絶対与えてくれない。いや、もっと手に負えないのが、部下に任せっきりで何もしてくれないくせに、何かのことで怒りをため込み、いきなり爆発する、身勝手で人使いの荒い上司です。悲惨なのは、今あげた人たちがどれも実在してオフィスを ...

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