第4章人の管理

初めて技術管理者に任命された者は、昇進したと思い込む。これでエンジニアとしての職務に関しても技術的問題に関しても先任権シニオリティ(勤続年数の長い者から順に、昇進、配転、解雇、休職などに際して優先的な扱いを受ける権利)を行使できる、と。だがこれは現実には、こうした面々をこれ以上出世できない下級管理職のレベルで留め置くのに恰好の手なのである。「新任の技術管理者」がいかなる先任権も認められない(管理職としては)入門レベルの職位にすぎないという現実は受け入れ難いものではあるが、実はこれこそが管理という職務に手を染める者にとっては最良の視点となる。

マーク・ヘドルンド

あなたは見事、会社の信頼を勝ち得、部下の管理を任されるところまで昇進を果たしました。人事部主導の、人的管理の基本に関する研修を受け、自分自身の過去の上司の中に今後のお手本にしていきたいすばらしい先輩がいて、その人に思いを馳せたりしています。とはいえ、ここからは頭の中のそうした知識やアイデア、理想像を現場で活かしていく「本番」です。

この章ではまず「部下ひとりひとりの管理」に焦点を当てます。この手のトピックを取り上げて種々の考え方やアイデアを詳解している本はすでにかなり出回っていますから、ここでは私自身が人的管理の基本要素と見なしている事柄を紹介していきます。 管理者としての責任を背負って立つことになったあなたは、人的管理の基本職務をどう捉えるべきなのでしょうか。

管理者になりたての適応期に重点的に取り組むべき課題として「自分なりの管理スタイルを見つけること」があげられます。多くの新任技術管理者は、チーム全体を運営するコツと、チームの各メンバー(個人)を管理するコツとを同時並行で習得していきますが、まずはチームの個々の構成員との関係を考えてみましょう(チーム全体を管理するコツと、あなた個人の技術系職務と管理の仕事との調整については次章で解説します)。なにしろチーム全体の質は個々の構成員の質に左右されるものですし、管理者であるあなたは構成員ひとりひとりに多大な影響を及ぼす存在なのです。 ...

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