第5章チームの管理
「直属の部下がひとりか2人いる管理者」から「チーム全体の責任を負う管理者」までは職位で言えば1段階上がるだけですが、だからといって職務内容も「個々の部下を管理する仕事」の総和に過ぎないかというと、そうではありません。職務内容はこの時点でガラリと変わってしまうのです。いや、それどころか、ここから上はランクがひとつ上がる度に「これまでとはまるで違う任務と課題を担う経験」を繰り返していきます。キャリアの梯子(キャリアラダー)を上がる度に「これから私は今までとは全然違う仕事を始めるのだ」と覚悟を決めて臨まなければなりません。「シニアエンジニアとして身につけ磨いてきたスキルを自然な形で拡張したものが管理職の職責だ」と思いたいところでしょうが、未経験のスキルや課題に取り組まなければならないのが現実なのです。
かつて私が「チーム全体の責任を負う管理者」用に使っていた職務記述書を以下に紹介しておきましょう(このランクの管理者を私は「エンジニアリングリード」と呼んでいました)。
エンジニアリングリードになるとコードを書く作業に費やす時間は減るが、チーム全体の作業の進行を遅らせたり妨げたりしなければ、小規模な技術的成果物の作成(バグ処理やちょっとした機能の作成など)に携わるべきである。エンジニアリングリードは、そうしたコードを書く作業以外に、チームの作業の遅滞を招くボトルネックや成功を妨げる問題を突き止め、これを解消する責任を負う。
この役を引き受けた者は組織全体の成功に多大な貢献をするものと期待される。とくに、もっとも価値のあるプロジェクトを見きわめ、そうしたプロジェクトに自身のチームを集中的に従事させる権限を有する。そのための取り組みの一環としてエンジニアリングリードはプロダクトリードと緊密に協力してプロジェクトの範囲を調整し、技術的成果物を確実に構築する。また、エンジニアリングリードはチームに必要な人数を確認し、その確保のための計画立案と人材募集を行う権限も有する。 ...
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