4章暗号化
暗号(cryptography)はイーサリアムの基盤技術の1つであり、特にコンピュータセキュリティで広く使われる数学の一分野です。cryptographyはギリシア語で「書いたものを秘密にすること」を意味しますが、暗号学においては単に書いたものを秘密にすること(暗号化〔encryption〕)のみならず、それ以上の意味を含んでいます。暗号を用いることによって、デジタル署名のように、ある秘密を知っているということを、その秘密の内容を明らかにすることなく証明したり、デジタルフィンガープリント(別名、ハッシュ値)のように、データの信頼性を証明したりできます。これらの種類の暗号学的証明は、イーサリアムアプリケーションでも広く使用されており、イーサリアムだけでなくすべてのブロックチェーンシステムの動作にとって重要な数学的ツールです。
ただし、本書の執筆時点では、イーサリアムプロトコルのどの部分にも暗号化は用いられていません。つまり、イーサリアムプラットフォーム上やノード間でのすべてのコミュニケーション(トランザクションデータを含む)は暗号化されておらず、誰にでも読むことができます。したがって、誰もがステートのアップデートが正しいことを検証し、合意形成を行うことができるのです。将来的には、ゼロ知識証明や準同型暗号などの発達した暗号ツールが利用可能になり、合意形成を取りながら暗号化された計算をブロックチェーン上に記録できるようになるでしょう。これらのツールの準備は進んではいますが、まだ実装はされていません。
この章では、イーサリアムで使用されているいくつかの暗号技術、具体的には、秘密鍵とアドレスという形式で資金の所有権を管理するために用いられる公開鍵暗号について触れます。 ...
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