3章Objective-Cのオブジェクトとメッセージ
オブジェクト指向言語として最初に普及した言語をあげるとすれば、Smalltalkということになるでしょう。1970年代にXeroxのパロアルト研究所(PARC)でAlan Kayのもとで開発され、1980年頃には世界的に有名になりました。
Objective-C(Obj-C)は1986年にBrad CoxとTom Loveによって、「Smalltalkに類似した構文をもつCの上位互換のプログラミング言語を実現すること」を目的として開発されました。1988年にNeXT社がObj-Cのライセンスを取得し、Obj-CはNeXTが開発を進めたOS、NeXTStepの基盤となりました。その後AppleがNeXTを買収し、NeXTのアプリケーションフレームワークはOS X用のCocoaへと発展し、さらにはiOSの基盤ともなりました。こうした経緯が、iOSプログラミングにおける主要開発言語がObj-Cである理由となっています。Cocoaのクラス名の多くが「NS」で始まるのはNeXTStepに由来しています。
1章でC言語の、2章でオブジェクト指向プログラミングの概要を説明しました。いよいよ本題のObj-Cの説明に入ります。この章ではObj-Cの基本となる事柄を説明し、続くふたつの章ではクラスとインスタンスについて説明します。また10章でより細かな内容に触れます。C言語の場合と同様、Obj-Cのすべてを解説するのではなく、iOSのアプリを作成するために理解すべき実用的な基礎知識を、筆者自身の経験に基づいて紹介していきます。
3.1 オブジェクトの参照はポインタ
C言語の変数は型を指定して宣言しますが、C言語の範囲でオブジェクトに相当する型を表現することはできません。そこで、Cにオブジェクト指向を導入するために、Obj-CではCの「ポインタ ...
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