16章Kubernetesにおけるメトリクス

自分が完全に無知となる対象については、非常に多くを知ることのできる可能性がある。

――Frank Herbert(米国のSF作家、1920~86)、“Chapterhouse: Dune”†1

[†1] 編注:引用は本書独自の翻訳です。“Chapterhouse: Dune”の邦訳は『デューン 砂丘の大聖堂』(早川書房)が出版されています。

この章では、15章で紹介したメトリクスという概念について、さらに詳しく説明します。具体的には、メトリクスの種類、クラウドネイティブサービスにとって重要なメトリクス、フォーカスすべきメトリクスの選択方法、メトリクスデータを分析して実用に役立つ情報を導き出す方法、生のメトリクスデータを有益なダッシュボードやアラートへと変換する方法について説明します。最後に、メトリクスを管理するためのツールやプラットフォームで候補となりうる選択肢を概観します。

16.1 メトリクスとは実際のところ何か

オブザーバビリティに対するメトリクス中心のアプローチはDevOpsの世界では比較的新しいものであるため、最初に少し時間を取って、メトリクスとは正確には何であり、どのように使用するのがベストかを考えてみましょう。

15章「15.1.5 メトリクスの導入」で説明したように、メトリクスとは特定の対象を測定した数値です。従来からサーバの世界で使い慣れている例としては、特定のマシンのメモリ使用率があります。物理メモリの10%が現在ユーザプロセスに割り当てられているだけなら、このマシンの容量には余裕が十分にあります。メモリの90%が使用中なら、おそらくマシンはかなりビジー(busy)な状態でしょう。

つまり、メトリクスが提供してくれる有益な情報の1つは、特定の瞬間における状況のスナップショットです。しかし、メトリクスはより多くのことを示してくれます。メモリ使用率はワークロードの開始や終了に応じて常に上下しますが、時間の経過に伴うメモリ使用率の ...

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