23章SaaS:評価基準
23.1 有料入会
SaaS企業のチャーン・エンゲージメント・アップセリングといった指標は、いずれもよく似たものになる。だが、多くの指標に大きな違いをもたらす要因がひとつだけある。それは、トライアルのときに事前の支払いをしてもらうかどうかだ。
顧客インテリジェンスとエンゲージメントのSaaSプロバイダーであるTotango社は、SaaS企業100社以上のトライアル・コンバージョン・チャーン率のデータを持っている。そして、サインアップのときにクレジットカードの入力を求めると、訪問者の0.5~2%がトライアルにサインアップするが、クレジットカードの入力がなければ、5~10%に上昇することを発見した。
もちろんサインアップだけがゴールではない。トライアルユーザーには有料顧客になってもらいたい。クレジットカードを入力していないトライアルユーザーは、約15%が有料サブスクリプションに登録している。一方で、クレジットカードを入力しているトライアルユーザーは、40~50%が有料サブスクリプションに移行している。
ユーザーの期待が明確に設定されていないまま、クレジットカードを事前に入力してもらった場合は、最初の支払いのあとにチャーン率が高まる。トライアル期限が終わったときにお金を支払わなければいけないことを忘れ、クレジットカードの請求を見てそれを思い出し、解約するのである。有料ユーザーの最大40%が解約する可能性があると言われる。だが、この最初のハードルを乗り越えれば、ほとんどのユーザーは定着する。2009年のPacific Crestの調査によれば、上位のSaaS企業は年間のチャーン率を15%未満に抑えている†1。
表23-1はクレジットカード入力の有無で、指標がどれだけ違うかを簡単にまとめたものだ。 ...
Get Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法 now with the O’Reilly learning platform.
O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.