2章Lean UXの原則

まっすぐ滑るんだ。思い切り速く。何かにぶつかりそうになったら、曲がれ!

──『やぶれかぶれ一発勝負!!』(1985年のアメリカのコメディ映画)

Lean UXにはデザインプロセスや組織文化、チーム組織の基盤となるいくつかの原則があります。これらの原則を、フレームワークと見なしましょう。まずは、この原則をチームを正しい方向に導くための指針とすることから始めます。次章以降で詳述するLean UXのプロセスを実践するなかでも、この原則を念頭に置いてください。Lean UXは、ルールではありません。それは、チームが採用するアプローチなのです。プロダクトチームが仕事をする文脈は無限にあり、デザイナーが関わる業界、会社、文化、規制、顧客、使命も異なることを考えれば、Lean UXのプロセスを組織で機能させるためには、当然、調整が必要になります。本章で説明する原則は、この調整のための指針になります。

この原則を適応できれば、組織の文化は変化していきます。これから紹介する原則のなかには、他よりも影響が大きなものがあれば、実践が難しいものがあります。いずれにしても、この章で説明するそれぞれの原則は、プロダクトデザインチームを、今日のアジャイルな状況に適した、協調的で部門横断的なチームに変えていくための指針になります。

2.1 Lean UXの基盤

Lean UXは、多くの重要な概念を基盤にしています。それは、いくつかの異なる考え方を組み合わせたものだと言えます。これらの源流となる考えを理解しておくことは、Lean UXを適用し、壁にぶつかったときに必要な情報を見つけるうえで役立ちます。

Lean UXの1つ目の基盤はユーザーエクスペリエンス・デザインです。Lean UXの本質は、ユーザーエクスペリエンス・デザインを実践する方法です。ヒューマンファクターや人間工学などの分野に根差し、さらにはヘンリー・ドレイファスのような工業デザイナーの仕事を通じて1950年代に生まれた「人間中心デザイン」というアイディアに基づくこれらの手法や考えは、今日ではドナルド・ノーマンが考案した「ユーザーエクスペリエンス・デザイン」(または単に「UX」)という用語で呼ばれています ...

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