3章成果

従来、ソフトウェア開発のプロジェクトは、要件と成果物によって構成されていました。チームには要件が与えられ、成果物を用意することが期待されます。成果物は、そのシステムや機能、技術が、要件を満たしていることを示すものとして提出されました。また要件には、戦略的なコンテキストについての説明がない場合がほとんどでした。「これをする理由は?」「誰のために?」「何をもって成功と見なす?」といった情報が欠けていたのです。

これに対しLean UXでは、機能やデザインの選択、そして何より開発に取り組む人たち——デザイン部門だけでなく、チーム全体——の成功の定義に戦略的なコンテキストを導入することで、仕事の枠組みを根本から変えます。Lean UXの目標は、成果物や機能を作ることではありません。目標は、顧客の行動や、世の中に対してポジティブな影響を与えること——すなわち、成果を生み出すことなのです。

3.1 私たちがしている仕事とは何か?

端的に言えば、Lean UXとは、「成果物主体のビジネスからの脱却」です。私たちは成果物ではなく、成果を生み出すためにビジネスをしています。ですから、ドキュメントやモックアップ、プロトタイプ、機能、ページ、ボタンなどの成果物を作ることばかりに目を向けるべきではありません。何より重要なのは、成果を出すこと。故に、望む成果を生み出すものだけを作ることに集中すべきなのです。

なぜ機能や成果物ではなく、成果に焦点を当てるべきなのでしょうか? それは私たちがデザインし、構築する機能が目指している価値を創造するかどうかを予測するのが難しい(多くの場合は、不可能)から——です。「このボタンは、ユーザーの購買意欲を高めるだろうか?」「この機能でエンゲージメントは高まるだろうか?」「この機能は、予想外の方法で利用されないだろうか?」「サービスに対するユーザーの関わり方を、うまくシフトさせられないだろうか?」といった問いに対する答えを、事前に理解するのは至難の業です。だからこそ、機能に注目するのではなく、生み出したい価値に注目し、望ましい価値——すなわち成果——を提供できるようになるまで、テストを繰り返したほうが良いのです。 ...

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