17章Lean UXの実践に際して組織に求められる変革

野球の世界では、確実なことは何もない。

──ヨギ・ベラ(元MLBの野球選手)

筆者はクライアントのチームにLean UXの手法を教えることを通じて、「Lean UXは運営・マネジメント手法でもある」という認識を抱くようにもなりました。Lean UXから最大のメリットを得るためには、組織は変わらなければならないのです。

組織を変えるのは簡単ではありません。しかし、それは避けては通れません。ビジネスを取り巻く状況は変わりました。組織も、変わっていかなければならないのです。現在では、ある程度の規模の企業(あるいは拡大を目指している企業)は、好むと好まざるとにかかわらず、ソフトウェアビジネスと無関係ではいられません。業界を問わず、企業がプロダクトやサービスを提供する上で、ソフトウェアは中心的な役割を担うようになっています。

このことは、私たちに力を与えてくれると同時に、脅威にもなっています。現在では、グローバルマーケットに参入し、需要増に応じてオペレーションを拡大し、ユーザーと継続的にコミュニケーションしていくことは、以前とは比較にならないほど容易になりました。しかし、それは諸刃の剣でもあります。これまでは本格的なソフトウェアの導入ができなかった小規模の競合他社が、同じ機会を手にすることになるからです。だからこそ、企業はLean UXを速やかに導入すべきなのです。

多くの組織がこの結論に達し、プロダクト開発チームの規模を拡大しようとしています。その際、アジャイルな開発手法の核となるリズムを用いて、ソフトウェア開発が行われるようになりました。しかし残念ながら、これらのアプローチのほとんどは名ばかりのアジャイルです。これらのアプローチでは、コラボレーション、透明性、継続的学習といったアジャイルの主な価値は得られません。デリバリーまでの期間は短くできますが、ソフトウェアチーム(チームのデザイナーを含む)を「製造モード」に追い込みます。その結果、デザインの価値の多くが失われてしまうのです。 ...

Get Lean UX 第3版 ―アジャイルなチームによるプロダクト開発 now with the O’Reilly learning platform.

O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.