18章エージェンシーにおけるLean UX

本書ではここまで、プロダクトやサービスの開発会社や、大規模な企業や組織のプロダクトグループ内でLean UXを機能させる方法について説明してきました。本書のアドバイスの大部分はどのような環境でも適用できますが、この章では、エージェンシーでLean UXを機能させるためには何が必要かについて見ていくことにします。

ここでいう「エージェンシー」とは、クライアントにサービスを提供する組織全般を指します。オレゴン州ポートランドにある社員4名の小さなデザインスタジオも、ロンドンにある1000人規模のマーケティングエージェンシーも、これに該当します。このようなエージェンシーにとってLean UXの実践を難しくするのは、何といってもクライアントの存在です。エージェンシーが、異質なカルチャーを持つクライアントに新しいアプローチを浸透させるのは簡単ではありません。そのような新しいアプローチをもたらすことが、クライアントから期待されている場合もあるでしょう。また、これまでとは違う仕事の進め方に拒絶反応を示すクライアントもあります。いずれの場合も、エージェンシーにとっては難しい問題になります。

この章では、最新の仕事の進め方を社内に導入しようとする際に考慮すべき5つの重要なポイントについて説明します。

18.1 どのような方式のビジネスをしたいか?

エージェンシーは、ほとんどの場合、成果物ベースのビジネスを行っています。デザインやプロトタイプ、リサーチ、部分的なソフトウェアを提供することで対価を得ているのです。このビジネスモデルは、成果を重視するLean UXのアプローチとは相反するものです。

従来型のエージェンシーのビジネスモデルはシンプルです。クライアントは成果ではなく、成果物(デザイン、仕様書、コード、パワーポイントなど)に対して対価を支払います。またビジネスモデルでは稼働率も重視されます。つまりエージェンシーにとって、従業員をできるだけ稼働させることが重要になります。 ...

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