1章ディープラーニングへの旅路

 やあ。これからディープラーニングを学んでいく、諸君の旅に本書を加えてくれてありがとう。この旅は長くなるだろう。本章では、まず本書に何が書かれてるかを少し詳しく説明し、ディープラーニングの背後にある重要な概念を説明する。それから、われわれにとって最初となるモデルを作り、いくつかのタスクに対して訓練してみる。技術や数学について詳しくなくても大丈夫だ。われわれがこの本を書いたのは、ディープラーニングを可能な限り多くの人に使ってもらえるようにするためなのだから(もちろん技術や数学に詳しければそれに越したことはないけれど)。

1.1 万人のためのディープラーニング

 ディープラーニングを使って素晴らしい結果を出すには、なかなか手に入らないものがいろいろと必要だと思っている人が多い。しかしそれは間違いだ。それをこれから本書で見ていくことになる。

 表1-1に世界レベルのディープラーニングを実行するために、実はまったく不要なものを挙げた。

表1-1 ディープラーニングに実は不要なもの

迷信(実は不要) 真実
大量の数学 高校数学で十分
大量のデータ 50要素未満でも記録破りの結果を出せる
大量の高価なコンピュータ 無料で使えるもので最先端の結果が出せる

 ディープラーニングは、複数の層で構成されるニューラルネットワークを用いてデータを抽出し、変換する計算手法だ。その応用範囲は、人間の音声認識から動物画像のクラス分類まで幅広い。ネットワークの各層は、直前の層の出力を入力として受け取り、徐々に精製していく。各層は、誤差を最小化し精度を向上させるように、アルゴリズムによって訓練される。このようにして、ニューラルネットワーク全体が指定されたタスクを実行できるように訓練されていく。訓練アルゴリズムについては次の節で詳しく述べる。ディープラーニングは強力で柔軟で簡潔だ。だからこそ、社会科学、自然科学、芸術、医学、金融、科学研究など、さまざまな分野に適用できる。個人的な例を挙げると、著者の一人であるJeremyは医学に関する知識はまったくないにもかかわらず、ディープラーニングアルゴリズムを用いて病気の診断を行うEnlitic社を立ち上げた。この会社は創業後わずか数ヶ月で、悪性腫瘍を放射線技師よりも正確に判定できるようなったと発表した( ...

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