付録APepperプログラミング
河田 卓志
本付録は日本語版オリジナルの記事です。本稿では人型ロボットPepperのROSでの活用方法について解説します。
A.1 開発プラットフォームとしてのPepper
2014年6月5日、家庭向け人型ロボットとしてPepperは発表されました。Pepperは感情認識パーソナルロボットとして大きな話題を呼んだロボットで、その制御ソフトウェアはAldebaran Robotics社(現ソフトバンクロボティクスヨーロッパ)が独自に開発し、熟成を重ねてきたNAOqiというロボットOSが採用されています。
NAOqiは分散処理をサポートするなど、基盤部分でROSと同じような基本思想を持ち、一方でロバストで汎用的であることを最優先としたROSと反対のアプローチ、すなわち明確なAPIを定義し、単体のロボットをAPI経由で効率的に制御できるようにすることに重きを置き進化を続けてきたロボットOSです。各APIと、フレームワークは完全に公開され、また専用のGUIベースの開発ツールを公開することで、誰でも簡単にロボットを動かす「アプリ」を作ることができる環境を提供しました。
身長121センチと、小学生ほどの大きさの動くロボットに十分な安全性を持たせ、家庭への導入を可能にさせたという点でPepperは画期的でしたが、そのソフトウェア開発プラットフォームを公開し、誰でも簡単にそのロボットを制御するソフトウェアを作れる環境を提供したという点でも画期的でした。Pepperは人とロボットとの距離を縮めるという点において一役買ったということは間違いなさそうです(図A.1)。
Pepperは足元にレーザーセンサーを持ち周辺の障害物を検出し、また目の中には深度カメラを搭載しています。これらは主に、人に寄り添うロボットとしての認知機能と人に危害を加えないための安全機能のために使われています。つまり人を認識し、その方向に振り向くと同時に自身の動きで人に危害を加えないように、腕や移動の範囲に制限をかけているのです。 ...
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