5章チャネルの実装
チャネル(channel)はスレッド間でデータを送受信するために用いる機構で、さまざまなバリエーションがある。1送信者1受信者でしか使えないものもあるし、任意の数の送信スレッドから利用できるものもあるし、さらには複数の受信者で利用できるものもある。ブロッキングのもの、つまり受信が(場合によっては送信も)ブロッキング操作になっているものもある。この場合操作が終了するまでスレッドはブロックする。スループットに最適化されたものもあるしレイテンシに最適化されたものもある。
バリエーションは無限にあり、すべてのケースに適しているような実装はない。
本章では、いくつかの単純なチャネルを実装する。これはアトミックの用途を示すためだけではなく、我々の求めることや想定することをRustの型システムで表す方法を学ぶためでもある。
5.1 単純なMutexを用いたチャネル
基本的なチャネルの実装にはアトミックに関する知識は必要ない。実装には、VecDeque
を用いて、これをMutex
で保護して複数のスレッドからアクセスできるようにすればいい。VecDeque
は基本的にはVec
と似たもので、先頭と末尾の双方に効率的に要素を追加/削除できる。次に、VecDeque
を送信されていていまだ受信されていないデータ(メッセージとも呼ばれる)のキューとして用いる。メッセージを送信したいスレッドは、キューの末尾にメッセージを追加し、メッセージを受信したいスレッドは、キューの先頭からメッセージを削除して取り出す。
もう1つ、受信操作をブロッキングにするために追加しなければならないものがある。新しいメッセージを待っている受信スレッドに通知を送るためのCondvar
(「1.8.2 条件変数」を参照)だ。 ...
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