1章機械学習の現状

「機械学習」(ML:Machine Learning)という言葉を聞いてほとんどの人がイメージするのはロボットだろう。人によって、ロボットのイメージが頼れる執事か恐ろしいターミネーターかの違いはあるかもしれない。しかし、機械学習は未来の夢物語ではなく、今すでにあるものだ。それどころか、OCR(Optical Character Recognition:光学的文字認識)などの特殊な分野では何十年も前から使われている。とは言え、メインストリームのテクノロジとして世界を席巻し、数億人の人々の日常生活の向上に役立った最初のMLアプリケーションが登場したのは、1990年代になってからだった。スパムフィルタ(spam filter)のことである。自己意識を持つスカイネットの域には達していないものの、スパムフィルタは技術的に機械学習と認められるものである(実際、スパムフィルタの学習能力は大したもので、メールにスパムのフラグを立てなければならないケースはごくまれになった)。その後、おすすめ商品の提案から音声検索まで、数百種にものぼるMLアプリケーションが開発され、数百の製品やサービスで目立たないながらも日常的に使われるようになっている。

機械学習はどこから始まり、どこで終わるのだろうか。機械が何かを学習(learn)するとは、正確にはどのような意味なのだろうか。Wikipediaのコピーをダウンロードすると、そのコンピュータは本当に「何かを学習する」のだろうか。突然、今までよりも賢くなるのだろうか。この章ではまず、機械学習とは何なのか、なぜ機械学習を使うべきなのかというところから話を始めていく。

機械学習とは何かがわかったら、いよいよ機械学習という大陸の探検に出かけるわけだが、その前に地図を見て、大陸内の主要な地域やもっとも目立つランドマークについて学んでおきたい。教師あり学習と教師なし学習、オンライン学習とバッチ学習、インスタンスベース学習とモデルベース学習の違いを頭に入れよう。次に、典型的なMLプロジェクトのワークフローをながめ、直面する課題がどのようなものかを検討し、機械学習システムを評価、調整するための方法を説明しよう。 ...

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