SLO サービスレベル目標 ―SLI、SLO、エラーバジェット導入の実践ガイド

12章適切に機能した例

Alex Hidalgo

信頼性へのSLOに基づくアプローチについて多くのことを学習してきました。第Ⅰ部をすべて読めば、プロセス全体の動作と信頼性スタックのコンポーネントについて理解できたと思います。また、第Ⅱ部のこれまでの章を詳細に読んだのであれば、賛同を得る方法、事象を実際に計測し、それらを使用してアラートと監視を行う方法、適切なSLIの計測値とSLOの目標値を選択するために使用できる統計と確率の基本的概念、SLOを念頭に置いてサービスを一から設計する方法、およびデータの信頼性が異なる議論を必要とする特殊なケースである理由などを、きっと納得していることでしょう。

第Ⅰ部では信頼性を確保するために必要な概念の概要を説明し定義して、第Ⅱ部のこれまでの章では、信頼性へのSLOに基づくのアプローチの具体的な側面について詳しく説明してきましたが、実はまだ検討していないことがあります。それは、今まで説明してきたことのすべてが、マルチコンポーネントサービスに対してどのように機能するか、あるいは、会社全体または組織全体にどのように適用されるかについてです。この章ではこれらの概念の多くを実践するための方法を検討します。

この章では、ある企業の例について説明し、インフラストラクチャのさまざまな部分にSLIとSLOを定義する手順を見ていきます。具体的な例を見ることは、これまでの説明の中では抽象的にしか思えなかった概念を適用するときに有効です。ここでは、顧客向けのWebページから始めて、ベンダーとのやり取りを行うサービス、内部アプリケーション、および依存関係または依存者の少ない独立したサービスまで、あらゆるものを取り上げる予定です。その旅を始める前に、あるスタートアップ企業の話をしましょう。その企業が生まれたいきさつや、どのようにして今日の状態まで発展してきたのかについてです。 ...