1章スタートアップはどこが違うのか

スタートアップはイテレーション†1を重ねる。プロダクトにものすごく集中する。学習を特に大切にする。従来型企業だって、こうしたことを重視しているかと問われれば「ええ、もちろんです!」と答えるだろう。けれど、実際にやっていることを見れば、そうじゃないことがわかる。

[†1] 訳注:本書での「イテレーション」は古典的なアジャイル開発手法の用語である「開発期間のタイムボックスへの分割」ではない。たとえば毎年新しいiPhoneが出荷されているような、リリースの繰り返しによって改善や発展を重ねていく取り組みを指す(頻度はプロダクトの性質により異なる)

この章では、スタートアップにはどんな違いがあるのか、プロダクトでスタートアップと競いたければ、従来型企業は何を再発見する必要があるのか、なぜ両者でソフトウェアの目的の捉え方が大きく違っているのかを見ていく。

そこから新規プロダクト開発に取り組むためのプラクティスを学べるのはもちろんだが、この章の内容はそこに留まらず、スタートアップみたいな働き方をするのに欠かせない、文化や姿勢を変えていく足がかりにもなるはずだ。

1.1 スタートアップは「火星」から来た

もしあなたがスタートアップ(もしくはスタートアップみたいに運営されているユニコーン企業)に入社したら、すぐに違いを感じることだろう。スタートアップのソフトウェア開発では、スケジュールや納期、予算は関心事の中心ではない。彼らが重視するのは、顧客、インパクト、学習だ。

どうしてそんなことになっているのか。まずは、スタートアップはなぜエンタープライズ企業なら当然のこと(計画に従うとか)を重視せずに、探索、発見、学習に力を入れているのかを簡単に見ていこう。

存在が保証されていない ...

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