8章大企業におけるSREの導入

Sriram Gollapalli(Agilent Technologies)

本章では、2006年の創業で後に買収されたSaaS(Software as a Service=サービスとしてのソフトウェア)スタートアップが大企業(前身企業は1930年代に創業)にSREを導入した経験について、当事者であった筆者が紹介します。ここには、旧来のIT、運用、サポート/品質管理といったチームや、互いに協力して業務を行うプロダクト別のエンジニアリング部門にとっての課題と機会も含まれています。想定する読者は、自分の組織やプロダクトにSREが必要であることは理解しているものの、現実に組織する方法を決めるにあたって課題に直面しているマネージャーです。本章の内容は、2017年の夏にアイルランドのダブリンで開催されたSRECon17 Europeにおける筆者の講演を元にしたものです。

品質とは、誰も見ていないときにきちんとやることである。

― Henry Ford(1863~1947、米国の自動車王)

8.1 背景

小さなSaaSスタートアップの共同創業者である筆者にとっては、大企業の一部となることはスリリングな経験でした。私たちのチームは、自分たちの知識を共有できることと、自分たちのビジネスを拡張するためにこのような大企業が提供してくれるリソースとインフラストラクチャを活用できることにワクワクしました。スタートアップであった私たちが学んだのは、マトリックス型の組織構造(各グループには機能別だけでなくプロダクトライン別も加わる、二重の直属関係があります)は、いざ新たなパラダイムを導入するとなると、柔軟であると同時に課題も多いことでした。

私たちが買収されたAgilent ...

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