ソフトウェアアーキテクチャ・ハードパーツ ―分散アーキテクチャのためのトレードオフ分析

3章アーキテクチャのモジュール化

9月21日（火）9時33分

これまでに幾度となく使ってきた会議室だったが、その日は雰囲気がまったく違っていた。集まった人々の間に雑談はない。これから開かれる会議の内容を受けて、会議室はとても重々しい空気に支配されていた。

障害を起こしているSysops Squadチケットアプリケーションの事業責任者やスポンサー達は、延々と続く課題をIT部門が解決できないことに懸念と不満を表明するため、アプリケーションアーキテクトであるアディソンとオースティンを呼び出していた。「アプリケーションが動作しないのなら」彼らは言った。「我々はこの事業をこれ以上継続することはできない」

緊迫した会議が終わると、スポンサー達は一人ずつ静かに退出していった。会議室にはアディソンとオースティンの二人だけが残った。

「最悪の会議でしたね」アディソンは言った。「アプリケーションが直面している問題を、私たちのせいにされるなんて。これは相当にまずい状況ですね」

「そうですね」オースティンは応える。「特に、製品のサポート事業を閉鎖するかもしれないというのはまずいです。そうなると、他のプロジェクトに配属されるか、最悪の場合、解雇されてしまうかも。クビになって、自由にサッカーをしたり、冬になったらゲレンデでスキーをしたりといった生活も良いかもしれません。ですが、どうあっても私はこの仕事を失うわけにはいきません」

「同感です」アディソンは言った。「それに、今の開発チームのみんなとは、とてもうまくやれてるんです。解散なんて嫌です」 ...