12章トランザクショナルサーガ

3月31日(木)16時55分

風の強い木曜日の午後、オースティンは遅くにローガンのオフィスに現れた。「アディソンからホラーストーリーについて尋ねてこいと言われてやってきたのですが……」

ローガンは作業を止めて顔を上げた。「その格好は今週末にあなたがするクレイジーなエクストリームスポーツか何かの格好ですか? 今度はどうしましたか?」

「春の終わりだから、みんなで雪解けの湖でアイススケートをするんですよ。ボディースーツを着てやるから スケートと水泳を組み合わせたようなものですね。でも、アディソンに言われたのはそのことではありません。チケットワークフローのデザインをアディソンに見せたら、すぐに『ホラーストーリーを作ったと言ってきなさい』と指示されたんです」

ローガンは笑った。「なるほど、ホラーストーリーサーガパターンに出くわしたわけですね。非同期通信、アトミックトランザクション、コレオグラフィを用いたワークフローを設計したんですよね?」

「なんで分かったんですか?」

「その組み合わせは、ホラーストーリーサーガというパターン、もしくはアンチパターンなんですよ。一般的なサーガパターンは8種類あるんですが、それぞれトレードオフのバランスが異なるので、知っておくと良いでしょう」

アーキテクチャにおけるサーガ(Saga)の概念は、マイクロサービスが普及する以前から存在している。元々、サーガは初期の分散アーキテクチャにおけるデータベースロックの範囲の制限を目的としたものだった。この概念を生み出した論文は、1987年のACMカンファレンスの議事録に掲載されている。Chris ...

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