第9章プロダクト体験の形を視覚化する

ウェブサイトは「私」と「私が欲しいもの」を知っている

私が初めてエクスペリエンスゴールに出会ったのは、2009年にSonyericsson.comのリニューアルに携わったときでした。ソニー・エリクソンの社内UXチームは、ユーザーエクスペリエンスのビジョンと、プロダクトライフサイクルステージにおけるその分割を検討するための方法として、このゴールを使用していました。

体験がどのようなものであってほしいかというゴールを定義することで、異なる視点から要件に取り組むアプローチを見つけたのです。コンテンツや機能など、ニーズに対応するものをいきなり定義するのではなく、ウェブサイトとユーザー体験に適用すべき3つの包括的なエクスペリエンスゴールを定義しました。そのうちの1つが「ウェブサイトは“私”と“私が欲しいもの”を知っている」というものです。次に、それぞれの包括的なエクスペリエンスゴールをプロダクトライフサイクルの特定のポイントに対して、より具体的なエクペリエンスステートメント(体験の指針)に分解しました。例えば、エクスペリエンスゴール「それは私と私が欲しいものを知っている」は、プロダクトライフサイクルの検討段階で「それは私におすすめを提供する」というものに分解されました。

多くの組織やプロジェクトは、ビジネスのニーズと要件リスト、またはユーザーストーリーのリストによって推進されています。後者はユーザーニーズと混同してはいけません。タイトルにユーザーという言葉が入っていても、実際のユーザーのニーズに基づいているとは限らないからです。ユーザーストーリーを書く際に、「~として、~をしたい、~そうすれば†1」といった形式で書くのは簡単です。しかし、常に書いているため、どんどん生成されるものになりがちです。そして「ユーザーとして…」と考えることで、自動的にユーザーのニーズを考慮していると思い込んでしまうことがあります。しかしながら、ユーザーニーズはもっと深いレベルから始まっていることが多いです。 ...

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