16章

データメッシュ

 本書は、ここまでは、業務系システムの構築に使うモデルを検討してきました。業務系システムは、業務データを操作するリアルタイムのトランザクション処理を扱います。また、日々発生する、外部環境(利用者や外部システム)とのさまざまな相互作用を調整します。業務系システムがモデルの対象とするのはオンライントランザクション処理(OLTP:Online Transaction Processing)データです。業務系システムと同じように重要で、別の視点から適切なモデルを作ることが必要になるのがオンライン分析処理(OLAP:Online Analytical Processing)データです。

 この章では、分析系データを管理する仕組みとして、データメッシュを学びます。データメッシュがどのように機能し、従来のOLAP系のデータ管理のアプローチとは、どのように違うのかを説明します。そして、最終的には、ドメイン駆動設計とデータメッシュは相互に補完する関係であることを学びます。その前に、分析系データモデルとは何か見てみましょう。そして業務系モデルを分析目的に再利用できない理由を確認しておきましょう。

16.1 分析系データモデルと業務系データモデル

「知識は力」です。分析系データとは、蓄積されたデータを活用することで、事業活動を最適化する方法、顧客ニーズを深く理解する方法、さらには機械学習(ML)モデルをトレーニングして意思決定を自動化する方法について、洞察する力を与えてくれる知識です。

 分析系モデル(OLAP)と業務系モデル(OLTP)は、異なる利用者に対して異なる価値を提供し、異なるユースケースの実装を可能にします。つまり、分析系モデルと業務系モデルでは設計の考え方が異なります。 ...

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