ハイパフォーマンス ブラウザネットワーキング ―ネットワークアプリケーションのためのパフォーマンス最適化

5章ワイヤレスネットワーク入門

5.1　ユビキタスコネクティビティ

ここ10年で最も世の中を変化させた技術トレンドは、ユビキタスコネクティビティの到来とそのさらなる発展の可能性です。メールチェック、音声通話、Webブラウジング、もしくは他のユースケースのためであっても、現在は場所、時間、そして環境を問わずこれらのオンラインサービスへの接続を期待できます。急いでいても、列に並んでいても、オフィスでも、地下鉄でも、飛行機の中でも、それらの中間地点でも接続できます。今日ではまだ、接続性確保のために回線を積極的に探す必要がありますが（WiFiホットスポットを探すなど）、どこでもインターネットに接続できるユビキタスコネクティビティにこそ間違いなく未来があります。

ワイヤレスネットワークはこのトレンドの震源地に位置します。ワイヤレスネットワークとは、広義では、ケーブルによって接続されていない、ユーザに移動性をもたらす全てのネットワークを指します。当然ながら、様々なユースケースやアプリケーションが存在します。そのため、特有のパフォーマンス上の性質を持ち、特定のタスクやコンテクストに最適化された、様々なワイヤレステクノロジーが存在することは当然のことです。既に今日では、多くのワイヤレステクノロジーが普及し、利用されています。例えば、WiFi、Bluetooth、ZigBee†1、NFC†2、WiMAX、LTE、HSPA、EV-DO、3Gモバイル通信、衛星サービスなどです。

[†1] 訳注　ZigBeeとは、センサーネットワークを念頭に置いた、低コスト低消費電力の近距離無線通信規格です。

[†2] 訳注　NFC（Near Field Communication）とは、非接触ICカードを始めとした、10cm程度の通信距離に限定された近距離無線通信規格です。 ...