12章GRCにリーン思考を取り入れる

万物は解釈の対象である。どの解釈が広まるかは権力の働きであり、真実ではない。

フリードリヒ・ニーチェ

信頼は単なる誠実さの問題ではないし、忠誠の問題でもない。それは友好と親善の問題である。私たちは私たちのためを思っている人を信じ、私たちの関心に耳を貸さない人を信じない。

ゲイリー・ハメル

大企業にはガバナンスがあるので、リーンスタートアップの原則および本書で提案する手法やプラクティスはうまくいかないだろうという話をよく耳にします。

「これは規制上の要件を満たさないだろう」

「それは我々の変更管理プロセスに合わないよ」

「うちのチームは本番環境にアクセスできないからね」

これらは、仕事のやり方を変える可能性を否定する理由の一例です。

こうした反対意見は、ガバナンスについて話しているわけではありません。リスクやコンプライアンスを管理するためのプロセスについて話しているのであり、それらをガバナンスと混同してしまっているのです。組織内の他のプロセスと同様に、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)†1を管理するために用意されているプロセスも全体の価値に寄与するように、継続的改善の対象にしなくてはいけません。

[†1] 典型的なGRCプロセスには、アクセスコントロール、ソリューションデリバリー(プロジェクトマネジメント)、変更マネジメント、IT利用に関するリスクを軽減するための活動が含まれます。

リーンエンジニアリングプラクティスを適用して、これまで説明してきたような実験の文化を育てている大企業は数多くあります。そうした企業も他社と同じレベルの企業コンプライアンスとレビューを必要としています。つまり、大企業であってもリーンを取り入れることは可能なのです。 ...

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