15章今いる場所から始めよう
もし何かをやってとてもうまくいったら、何か別の素晴らしいことをやるべきだ。過去の成功に長くとらわれてはいけない。次のことを考えよう。
スティーブ・ジョブズ
今から1年後、あなたは今日から始めていればよかったと思うでしょう。
カレン・ラム
本書の目標は、大規模な組織のもうひとつの未来を思い描いてもらうことです。それは、従業員・顧客・製品が戦略の中心にある未来です。新しくなった文化と環境によって、絶えず変化する市場の要求に、すばやく順応できるようになる未来です。
さまざまな背景や状況を抱えた組織を取り上げ、それらの物語やそこから学んだ教訓を紹介してきました。そして、どんなに複雑な環境であっても成長は可能であり、最も困難な問題を解決できることを強調してきました。ところが、成功までの道のりは直線ではありません。決められた指示も、マイルストーンも、KPIもありません。不確実性と不完全な情報を抱えて前進することに、組織は慣れる必要があります。そのなかで、組織は学習・調整・成長するのです。
仕事のやり方を変えることの最大の障壁は、思い込みです。あまりに組織が大きすぎて、あるいはあまりに官僚的すぎて、変えることができない。特別な事情があって、本書で説明したプラクティスを取り入れられない。そのように思い込んでいるのです。この道を歩み始めた人たち・チーム・ビジネスは、これから進むべき道も、どのような結末を迎えるかも、最初は何ひとつわかっていなかったことを思い出しましょう。わかっていたのは、何も行動しなければ、確実にマイナスの結末になるということでした。
15.1 組織変革の原則
あらゆる変化はリスクを伴います。とりわけ、本質的に文化の変化を伴う組織変革は、最も難しい変化です。組織にアイデンティティをもたらしている力を相手にしているからです。リーダーたちが、数か月で終わるような「組織変革」プログラムを計画することには、今でも驚かされます。イノベーションや変革は、日常的な仕事の一部です。それをイベントとして扱っていては、決して大きな結果や持続的な結果は生まれません。こうしたプログラムでは、そのことがわからないのです。現在の課題、リーダーの交代、市場のトレンドに合わせて定期的に変革プログラムを開催しても、組織に実験の文化を浸透させることをしなければ、短期的なちょっとした変化を達成するだけです。その後、組織はすぐに以前の状態に戻ってしまうでしょう( ...
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