4章認知的負荷を軽減する
何より「準備」こそが成功のカギである。アレクサンダー・グラハム・ベル
ユーザビリティの観点から見て、ユーザーがタスクを直感的にこなせるデザインを模索する際に何よりも大切なのは、ユーザーの脳にかかる負担、すなわち認知的負荷を軽減することです。たとえば選択肢など、要素を盛り込みすぎるとユーザーの脳がパンクして「タスクの完了」という本来の目的が追求できなくなってしまうのです。そしてこれはステークホルダーとの会議(S会議)という「タスク」にも当てはまります。この場合に我々デザイナーが目指すべきなのは、余計な選択肢などの「障害物」を極力排してステークホルダーの脳にかかる負担を軽減し、「デザイナー案に合意し、承認する」という本来のタスクに専念してもらうことです。デザインの概要説明が一貫性を欠いていたり、他のステークホルダーが筋違いの文句をつけてきたり、話がプロジェクトとは無関係なほうへ逸れてしまったりして、肝心のステークホルダーの気が散ってしまうと、結局はデザイナー側のタスクの完遂が難しくなってしまいます。ただ会議を開けばよいのではなく、しかるべき成果のあげられる有益で充実した会議にしなければならないのです。
そういう意味で、たとえあなたが「ステークホルダーのことを事前に理解する」という準備(3章参照)を済ませたとしても、その理解に沿って前述のような障害物を打ち崩し、会議を実りあるものにしなければ、せっかくの準備も無駄になってしまいます。そこでこの章では、S会議で議論の妨げとなりそうなものを極力排除する方法や、ステークホルダーがしそうな反論や提案を予測する手法、直接の関係者でなくてもプロジェクトを後押ししてくれそうな人を動員するコツを紹介します。また、S会議の準備は(頭の中だけで行うものも、実際に声に出して行うものも含めて)リハーサル抜きでは完璧とは言えませんから、その要領も紹介します。こうした予行演習では、 ...
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