11章難局を打破するための方法

どんな難局にも潜在的な価値はある。そう信じ、それを模索しろ。ノーマン・ヴィンセント・ピール

正直言って、ステークホルダーにデザインを説明する会議(S会議)を成功させるコツや秘訣をひとつ残らず実践してもなお、難局に遭遇してしまう時があります。それは「デザインにまつわる不本意な変更をステークホルダーから迫られ、全力を尽くして阻止しようとしたが失敗し、変更をせざるを得なくなった」という状況です。原因として考えられるのは、「デザイナー側としてはあれこれプロとしての提案をし、ステークホルダーの考えを改めさせようとしたが聞き入れてもらえなかった」「自説についてのデザイナー側の解説が説得力を欠いていた」などです。この章では、こうした不本意な変更要求に対処するコツや、そうした要求によって「危機に陥った」UXを救う手立てをいくつか紹介します。その目的は「的を射ていると確信していた解決法に対してステークホルダーから異論が出た場合でも、UXに悪影響が及ばないようにすること」です。

具体的には次のようなものを紹介します。

  • ステークホルダーからの好ましくない変更要求に無理のない範囲で応じるコツ
  • どれほど悲惨なものだと思っても、その変更要求を好機と捉えるコツ
  • 「優先すべき戦線を見定める」という戦法により「信頼残高」を増やすコツ
  • 自分に誤りがあると気づいた時、それを認めて修正するコツ
  • (悪意ではなく)しかるべき意図を持って、ステークホルダーの目を逸らす要素を忍び込ませるコツ
  • プロジェクトに関するステークホルダーの「期待」を上手に調整するコツ

まずは、そもそもこうした「難局」を招いてしまった根本的な問題を明らかにしておきましょう。

11.1 なんでこんな事態に?

ステークホルダーからデザインの不本意な変更を迫られる――我々デザイナーが是が非でも回避したい事態です。それでもそんな事態になってしまったら、なんとか解決を図らなければなりません。この手の問題に対処するための第一歩は、原因を究明し、「仮にどのようにしていたらこの事態を予防できていたか」を考えることです。S会議で、ステークホルダーのニーズに沿った応対ができるよう、ステークホルダーの意見にしっかり耳を傾けて内容を十分理解したものの、それでも同意が得られない(あるいは、ステークホルダーがあくまで変更しろと言って譲らない)――その理由はいくつか考えられるので、それをこのあと見ていきます。 ...

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