1章バイオインフォマティクスの学習方法

 現在、世界中の研究室で、さまざまな機械が地球上の生物のゲノムのシークエンシングを行っている。急速なコストの減少と、ゲノムシークエンシング技術の進歩にもかかわらず、私たちは細胞、組織、生物、生態系それぞれに含まれる生物学的情報の一部を垣間見ているにすぎない。しかし、私たちが集めてきたささやかな生物学的情報は、いまや生物学者たちが取り組まなければならない山のようなデータとして積み上がっている。これまでの人類史上で、生命の複雑さを理解する能力が、これほどまでデータを操作および解析するスキルに依存していた時代はなかった。

 本書はデータスキルの獲得を通して、バイオインフォマティクスを学ぶことを目的としている。この章では、データスキルとは何か、そして、データスキルを学ぶことがバイオインフォマティクスを学ぶ最も良い方法である理由を見ていく。また、ロバストで再現性の高い研究が必要としているものが何かを見ていく。

1.1 なぜバイオインフォマティクスなのか? 増大する生物学データ

 バイオインフォマティクスは、専門的なスキルやツールを用いて、大量のデータから生物学分野に関するなんらかの知見を見つける学問だ。かつての生物学では、扱うデータのサイズは小さく、扱いやすいものだった。ほとんどの生物学者は、統計コースを取った後、デスクトップPC上でMicrosoft Excelを使用して自分のデータを解析することができた。しかし、この状況は急速に変化している。大規模な配列データの利用が広がりつつあり、この先はそれが一般的になる一方なのだ。こうしたデータを解析するには、さまざまなツール、新しいスキル、大量のメモリを搭載した多数のコンピュータ、処理能力、そしてディスク容量が必要だ。 ...

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