12章データシステムの将来
「自己以外のもの(他者)を目的としてこれにまで秩序づけられているところのもの」の究極目的が、このもの自身の存在 esse における保全 conservatio にあるというごときことはあり得ない。たとえば船長は、自己に委ねられた船というものの保全 conservatio を究極目的として志向するわけではない。船はすなわち、それ自身とは別な、航海 navigare するということを目的として、これにまで秩序づけられているものなのである。
――トマス・アクィナス、“Summa Theologica”(1265-1274)
『神学大全 第9冊』(高田三郎、村上武子 訳、創文社)
ここまで本書のほとんどは、現在の姿について説明するものでした。最終の章である本章では、視点を将来に向け、あるべき姿について論じていきます。本章では、アプリケーションを設計し構築する方法を根本から改善していくと思われる考え方やアプローチを提案していきます。
もちろん将来に関する意見や推測は主観的なものなので、本章で私の個人的な意見を述べる際には一人称を用います。読者の皆さんは、それらの意見に反対し、自分の意見を形作っていただいて構いませんが、本章での考え方が少なくとも生産的な議論の出発点になり、しばしば混乱して受け止められている概念を多少なりとも明確にできればと願っています。
本書の目標は、1章で大まかに述べました。すなわち、信頼性があり、スケーラブルで、メンテナンス性が高いアプリケーションやシステムを作る方法を調べることです。このテーマはすべての章を通じて流れており、たとえば信頼性を高める助けになる多くの耐障害性アルゴリズム、スケーラビリティを改善するためのパーティショニング、メンテナンス性を改善するための進化や抽象化のための仕組みを論じてきました。本章では、これらの発想をすべてまとめて基盤とし、未来を思い描いていきます。私たちの目標は、頑健性、正確性、進化性、そして究極的には人類への貢献において、今日のアプリケーションよりも優れたアプリケーションを設計する方法を見いだすことです。 ...
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