はじめに
アジャイルとの出会い:「倍の仕事を半分の時間で」
これから私たちはアジャイルプロセスに取り組むことになった。そうすれば倍の仕事を半分の時間でこなせるようになるんだ。
アジャイルを初めて耳にしたのは、そんな言葉だった。それに疑問を持つこともなかった。私はそこそこの大きさの会社のプロダクトマネージャーだった。その会社の次年度計画を共有するための全社会議で、経営チームがそう発表したのだ。アジャイルというのが固有名詞の「アジャイル」なのか、すばやく仕事を進めるという話なのかはよくわからなかったが、いずれにしても良さそうなアイデアだった。当時、私のチームでは新しいプロダクトのリリースにかなり時間がかかっていた。上層部の人事異動のせいで、何を実行するかの明確なビジョンがなくなってしまったのが大きな要因だった。「アジャイル」ならなんとかなるのか? そう思って、自分の机に戻って「アジャイルプロセス」という単語で検索してみた。Wikipediaにはこうあった。
アジャイルソフトウェア開発とは反復的かつ漸進的なソフトウェア開発手法の総称である。要求やソリューションは自己組織化した機能横断チームのコラボレーションによって生まれる。適応型の計画、創発的な開発とデリバリー、タイムボックスによる反復的なアプローチを促進し、変化に対してすばやく柔軟に対応することを是とする。開発サイクル全体を通して予測可能な相互作用を促す概念的なフレームワークである。2001年に提唱されたアジャイルソフトウェア開発宣言のなかで、この単語が定義された。
この説明を読んでいて、自分は深く考えていなかったのではないかという気がした。この段落は濃密で、そこに含まれている「自己組織化」、「創発的な開発」、「変化に対してすばやく柔軟に対応」という概念はどれも間違いなく ...
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