行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する

事例2

株式会社マネーフォワード

資産管理が物語になり未来の行動を変える

　株式会社マネーフォワードは2012年に設立されたフィンテック企業で、お金の見える化アプリ「マネーフォワード ME」をメインプロダクトの１つとしてユーザーに提供している。法人・個人事業主向けのクラウド会計システムなどの関連サービスを拡大しながら「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに「新しい金融サービス、世界最高のお金に関するインターネットサービスを創る」ことを目指している＊3。

　マネーフォワードでは、家計簿をつけ自身の収入と支出を把握することに加え、銀行口座の残高やクレジットカードの利用履歴など、資産の状態を一元管理することを「お金の見える化」と表現している。

　本稿ではお金の見える化アプリ「マネーフォワード ME」のプロダクトマネージャー西方夏子氏とマネーフォワード社の広報部長柏木彩氏へ行った取材の内容をもとに、本書で述べた行動変容デザインを実践しているといえる国内事例の１つとして紹介する。

マネーフォワード MEのターゲットアウトカム、アクター、ターゲットアクション

　はじめに、マネーフォワード MEのサービスのターゲットアウトカム、アクター、ターゲットアクション、MVA（第Ⅱ部参照）を明記すると以下のようになるだろう。

●ターゲットアウトカム：家計簿を自動化したユーザーが実生活において行動変化を起こすこと

●アクター：マネーフォワード MEを利用するユーザー ...