7章時系列に使える状態空間モデル
状態空間モデルは、前章で見て来た統計モデルに似ていますが、動機がより「現実世界」的です。状態空間モデルは、現実世界のエンジニアリングの問題から生じる懸案事項、例えば、推定を行う際に測定誤差をどのように考慮に入れたらよいか、推定に事前知識や信念をどのように織り込めばよいかなどの事柄に対処します。
状態空間モデルは、真の状態が直接観測できず、他の観測できる事象から推定するしかない世界を仮定します。状態空間モデルは、例えば、世界の真の状態が系の内部ダイナミクスと系に加えられる外力の両方によってどのように時間発展するかなどの、系のダイナミクスの規定にも依存します。
今まで数学的な文脈において状態空間モデルを見たことがない人でも、日常生活の中ではきっとこのモデルを使っているはずです。例えば、交通量のある道路で蛇行する車を見かけたとします。すると、その車が向かっている方向や、自分の身を守るにはどうするのが一番よいかを判断しようとするでしょう。飲酒運転のようなら、警察に通報することを考えるでしょう。反対に、一度きりの原因で一時的に気が散っただけのようであれば、おそらく干渉はしないでしょう。その後数秒から数分の間に、自分が構築したその運転手の状態空間モデルを更新して、どうするか判断するでしょう。
状態空間モデルが使われる典型的な例は、宇宙に打ち上げられたロケットです。ニュートンの法則がわかっているので、系の力学の規則と時間変化する運動の様子を記述できます。また、位置を追跡するために使われるGPSやセンサなどにある程度の測定誤差があることもわかっているので、それを定量化し計算の不確実性に織り込むことを試みます。最後に、系には多数の未知の事象があるので、特定のロケットに働くすべての力を考慮することは不可能であることもわかっています。したがって、他の未知のノイズ源、例えば太陽風や地球上の風やその両方などに対して堅牢な過程が求められます。実は、過去50年の統計学と工学の進歩が、こういった状況への対処に非常に役立つことが証明されています。 ...
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