9章先見性を生み出す
私たちの顧客やビジネスが幸せになる信頼性や回復力を実現する方法を見つけたり思い描いたりするためには、各組織は後知恵バイアス†1に惑わされることなく振り返りができる必要があります。回復力のある組織は、過去の成功を自信の理由付けに使ったりはしません。その代わり過去の成功をもっと深く考え、裏に潜むリスクを見つけ出し、システムがどのように成功しどのように失敗するかのメンタルモデルを再構成する機会であると捉えます。
[†1] 訳注:hindsight biasのこと。物事が起きた後にそれが予測可能だったと考える傾向を指す。
プラットフォームの信頼性を計測したり、ゲームデーを実施したりできるようにするその先に、カオスエンジニアリングの鍵となるコンポーネントが存在します。それぞれ個別のシステムがどのように構成されているかについての懸念、アイディア、メンタルモデルといったものを理解したり、組織が技術的あるいは人的な回復力に優れているのはどの分野なのかを学んだりするのは、コードによって自動化できることではありません。この章では、カオスエンジニアリングの3つのフェーズと、すべての人に大きな利益をもたらすはずの各フェーズに潜む隠れたゴール、つまり専門知識を抽出する方法としてカオスエンジニアリングを使うことについて取り上げます。
私たちの業界におけるカオスエンジニアリングの各ステージの中で、長きにわたって投資されてこなかったのは、事前準備と事後処理のフェーズです。これらのフェーズは、多くの場合誰か1人、特にファシリテータが済ませてしまうことが多い傾向があります。この人は、実験の最中は第三者的に振る舞うこともありますが、実験の前にはチームが何をするのか、システムが何たるか、システムがどのように動くのかをチームに教える役目もあります。インシデントになる前に問題を見つけることに最適化しすぎると、システムに対するメンタルモデルを再構成するというカオスエンジニアリングの主要なゴールから得られるものが少なくなってしまいます。 ...
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