14章オープンな心、オープンな科学、そしてオープンなカオス
カオスエンジニアリングは科学です。現代の急速に進化するシステムに生来備わった複雑さのなかに隠れた、システムの弱点の証拠を探します。これは経験的な実験を通じて行われ、制御された下で不安定な条件を注入する対象は、インフラ、プラットフォーム、アプリケーションのみならず、人々やプロセス、プラクティスにまで及びます。
あらゆる科学と同様に、カオスエンジニアリングは協調的に取り組まれた時に最も真価を発揮します。つまり関係者全員が、何の実験を求められているか、いつ行われるか、そしてどのような発見が得られたかを知っている状況です。しかし、これもまた科学と同様に、妨害されると途端に崩れ去ってしまうものでもあります。
14.1 協調的なマインドセット
2つのマインドセットを考えてみましょう。1つは、エンジニアがこんなふうに考えている場合です。「自分は弱みを見つけてやりたいんだ。皆のシステムにあらゆる種類のおもしろそうな危害を加えてみて、なぜシステムの改善が必要なのかを思い知らせてやるのが楽しみで仕方ないね」
この手のマインドセットを持ったチームは、他者のシステムにカオスをもたらします。学習を目的とすることには違いないのですが、カオスチームが他者のシステムに対して実験を行うときに構築されがちな、相手と衝突する形の関係の中では、しばしば目的は見失われてしまいます。重大な問題は、他者のシステムに対してこれをやっているということです。このようなチームの到達点は、せいぜい「これが問題だったのか!」までいけばいいほうで、仮に「こんな解決策がありそうだ」というところまで至ったとしても、システムの持ち主であるチームからは、引き続き強い抵抗を受け続けることになるでしょう ...
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