4章1on1

我に支点を与えよ。さらば地球も動かさん。

――アルキメデス

午後になって、チームとの1on1を始めます。今日はベン、ケイティ、リーの3人と予定しています。先週チームと行った初めてのミーティングは万事うまくいきましたが、チーム内の役割や実施中のプロジェクトに関する情報を集めるのに終始しました。今日が本番ですが、緊張しています。

内容については、昨晩、インスピレーションを与え、モチベーションを生み出し、人生を肯定するようなアイデアをたくさん考えました。しかし、朝になってふりかえると、ぎこちなくて、安っぽく、間抜けな感じがします。あなたはイライラしながら指で膝を叩きます。チームとの関係性については、正しいスタートを切りたいものです。沈黙のなかで何時間も座ったまま時間が過ぎるのではないかと心配しています。おもしろいことが言えなかったらどうしよう? そもそも何を言ったらよいのだろう? 前任のマネージャーはだいたい不在だったので、まねできるような経験もありません。

スマートフォンを取り出して、Googleで「1on1 話題」と検索します。検索結果の最初のページに出てきた多くのまとめ記事をざっと見ます。「自己批判?」 それを調べるのはまだちょっと早そうです。「目標の達成状況の確認?」 えっと、まだ誰とも何も設定していません。「給与について話し合う?」 えー、これは普通のミーティングの初回にはふさわしくなさそうです。「コーチング?」 でも何に対する? 意味のある会話をリズムよく行うには、まずは相手を知らなければいけません。

最寄り駅で地下鉄を降ります。地上に続く階段を上りながら、何かアイデアが降ってこないかと期待します。さもないと、午後は気まずい時間になってしまいそうです。渦巻く都会の喧騒の中で、前を行くスーツ姿の男性2人組の大声が嫌でも耳に入ります。 ...

Get エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法 now with the O’Reilly learning platform.

O’Reilly members experience books, live events, courses curated by job role, and more from O’Reilly and nearly 200 top publishers.