10章人間って難しい
すべてをわかった気になっている人間は、同じように思う私たちからすれば鬱陶しいものだ。
――アイザック・アシモフ
今日チームは、厳しく叱責されることになっています。何か月にもわたって技術的な検討を重ね、プロトタイピングを行ってきたのに、新規プロダクトのバックエンドを想定どおりに動かすようなものを何一つ形にできなかったからです。チームは失望していて、機械学習のハードウェアとアノテーションに数100万ドルを費やさなければ、価値あるものは何もデリバリーできないと思い込んでいます。
これはエンジニアリング担当VPや、セールスディレクターにとって受け入れられるものではありません。実際に血相を変えて怒っています。
最初に口を挟んだのはセールスディレクターです。「正直に言って、半年もやってきて何もできなかったと、そういうことだな?」部下のエンジニアたちは、このような激しいぶつかり合いには慣れていません。特に上位の相手となればなおさらです。こういう状況では、自分たちが非常に愚かに思えてしまいます。
「頑張ったのですが、ただ単純に、問題が難しいのです」
緊張しているせいで、興味深いプロトタイプができたとか、関係のない課題に対する知見が副次的に得られたとか、そういったことも伝えそびれてしまうのです。
「6人で半年、それで何もないだって? チームはどうなってるんだ? どうせ一生懸命働いていないんだろう。セールスチームと比較したら差は歴然だ。うちのチームは朝7時から夜7時まで働いているんだ。いったい、いつになったら本腰を入れて当事者になるつもりだ?」
「すみません。ただうまくいくように思えないんです」と、データサイエンティストはきまり悪そうに答え、結果的にプロダクトにできたかもしれない有用なプロトタイプをいくつも作り出したことに、またしても触れそびれます。 ...
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