17章スタートアップ

ゲームは変わっていない、ただ過酷になっただけだ。

――スリム・チャールズ

あなたはパウロから送られてきたばかりのリンクを開きます。

地元のスタートアップ、30億ドルの評価額を得て大成功。

「まさか! その角を曲がったとこのあのオフィスが?」

パウロが「そうです、それです」と答えます。

あなたは記事に目を通します。「創業してたった2年で? デリバリー手配の、たいしたことないアプリケーションを作ってたのに?」

「最後のコメントを見てくださいよ」とタラが言います。

「ウソ? サムって、以前ここにいたあのサム?」

パウロが椅子を転がして近寄り、「彼女の職位を見てくださいよ」とあなたの画面を指差します。

……と、エンジニアリング担当VPサム・ハリスは語った。

ビクッと身構えます。「え! 彼女がVP!?」

パウロが「ですよね?」と言います。

タラの言葉には嫉妬が滲んでいます。「どうせ彼女もそのうち下品な富裕層の仲間入りでしょ。ストックオプションの価値がどれだけだか考えてもみてよ!」

最後まで記事に目を通すと、自分のなかに、怒り、嫉妬、後悔が渦巻きます。あなたは今の仕事で採用される前に、まさにこの小さなスタートアップの面接を受けていました。あなたは、規模が大きく給与が高いほうの会社を選択したのです。

記事にあるサムの職位にもう一度目をやりました。エンジニアリング担当VP。あなたは、彼女が退職を申し出た日のことを覚えています。彼女が退職して、あなたが10年もかけて築いたキャリアを一足飛びに追い抜くなんてことは、まるでわかっていなかったのです。

窓の外の賑やかな街並みに注意を向けると、疑問が浮かんできます。今いる会社は自分に合っていないのだろうか? 初期のスタートアップにでも入っておくべきだったろうか? ...

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