Running Lean 第3版 ―リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク

10章顧客が断りきれないマフィアオファーを提供する

断りきれんオファーを出す。

―映画『ゴッドファーザー』ドン・コルレオーネの台詞

課題発見とソリューション設計のスプリントが終わったので、説得力のあるマフィアオファーを作成する要素が整いました。

次の2つのスプリント（図10-1）では、苦労して集めたすべてのインサイトをテストします。ここが肝心なところです。あなたの目標はアーリーアダプターから確実な約束をもらうことです。これがMVPを構築する裏付けとなります。

マフィアオファー提供スプリントに飛び込む前に、マフィアオファーがどのようなものか見てみましょう。

図10-1　マフィアオファーを作成・提供するスプリント

10.1　事例：iPadのマフィアオファー

2007年にスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したときのことを今でも覚えています。基調講演が始まると、Appleは革新的なデバイスでスマートフォン市場に参入すると発表しました。それは、3つのデバイスを1つにまとめたものでした。3つのデバイスとは、音楽プレーヤー、PDA、電話です。彼は既存のスマートフォンの問題点を指摘しました。それは、本体の40%がプラスチックのキーボード（スマートではない）に占められており、使いやすいとは言えない、というものでした。本体のすべてが画面だとしたら？ スタイラスではなく、指で操作できるとしたら？ iPhoneを見せる前に、こうしたUVPを効果的に示しました。それはこれまでとはまったく違うものであり、大きな注目を集めました。彼がデモをしている間、私は手品が行われているのだと思いました。あのようなユーザーインターフェイスを見たことがなかったからです。私は魅了され、iPhoneが発売されたときは行列に並びました。 ...