2章非中央集権アプリケーション

 本章では、イーサリアムブロックチェーンでアプリケーションを構築するユースケースをいくつか紹介する。それぞれのユースケースでは、ブロックチェーンのどのような特徴がこれらのアプリケーションをうまくサポートするのに役立つのかを調べる。そして可能であれば、実環境での例をいくつか取り上げる。そして最後に、次のプロジェクトを開始するときに、ブロックチェーンが正しい選択であることを確認するために検討すべき点をいくつか示す。

 それではさっそく、私たちが最初に、そして最もよく使うことになると思われるものから見ていこう。それはトークンである。

2.1 トークン

 トークンは所有権を表す抽象概念である。所有権は、車や家などの固定資産を使ったり売ったりできるといった、特別な権利という意味合いを持つ。この場合、所有権の証明であるトークンは、権利書や証書によって表される。また、ソフトウェアや映画などにアクセスする権利を提供することもできる。この場合のトークンは、ライセンスキーや物理的なチケットによって表されるかもしれない。所有権は頻繁に変更できるものであるため、暗号によって保護されたプラットフォームで所有権の変化を追跡することには大きな意味がある。

 イーサリアムコミュニティでは、開発者によるトークンの作成を支援するために、EIP(Ethereum Improvement Proposal)プロセス†1を通じてさまざまな種類のトークン規格を策定している。ここでは、これらの規格のうちERC-20†2とERC-721†3の2つを取り上げる。

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