3章

事業活動の複雑さに立ち向かう

 前の章で説明したように、プロジェクトを成功させるには同じ言葉を作り出すことが不可欠です。ソフトウェア技術者と業務エキスパートが同じ言葉を使ってお互いの意図を伝えます。同じ言葉は業務エキスパートが業務活動をどのようにとらえ、業務の基本原則をどのように考えているかを表現します。

 同じ言葉を使う目的は、それによってソフトウェア設計を駆動することです。ですから言葉の意味が明確で一貫していることが必要です。同じ言葉からは、あいまいさ、暗黙の前提、そして見当外れな詳細を取り除くことが必要です。しかし、事業活動の全体で見れば、業務エキスパートたちの業務のとらえ方が一貫していないこともあるでしょう。同じ事業活動に対して、別の業務エキスパートが別のモデルを使うことがあるでしょう。具体例を見てみましょう。

3.1 異なるモデルの混在

 テレマーケティングの会社を考えてみます。販売促進部門がオンライン広告を使って「見込み客」を獲得します。営業部門はその「見込み客」にコンタクトして製品やサービスの購入を勧誘します。図3‐1が全体の流れです。

図3-1 事業活動の例:テレマーケティング

図3-1 事業活動の例:テレマーケティング

 業務エキスパートの言葉の使い方を分析すると、おかしな点が見つかります。販売促進部門と営業部門とでは、次のように、同じ用語が別の意味で使われています。

販売促進部門

販売促進の担当者にとって「見込み客」とは、ある人が自社の製品に興味を持ったという通知です。その人の「連絡先」が手に入ることが「見込み客」の意味です。 ...

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