第12章
効果を測定する
Opowerは、バージニア州アーリントンに拠点を置くエネルギー効率化の企業で、プロダクトによる行動変容においては世界最大級の、大規模な実験を行っている。何百万人もの人が、単に電力会社*1からの手紙を開封するか、サーモスタットを調節するだけで、実はこの研究に参加している。
利用者に毎月届く利用明細が、Opowerを有名にした。その利用明細では、どれくらいエネルギーを使ったかを(匿名の)近所の人たちと比較して見せている。これは社会心理学でピア比較と呼ばれる、よく知られたテクニックだ。第10章でも少し紹介した。[図12-1]は、その一例だ。
政府や民間、学術界による数多の刊行物が示すところによれば、Opowerが行ったシンプルな比較だけで、電気料金が平均でおよそ2%も削減された(Alcott 2011)。小さく思えるかもしれないが、合算すれば2.6テラワット時以上の電力が削減されたことになる。この電力は1年間に30万世帯の住宅に供給される量に相当し、およそ3億ドルもの節約になっている(Opower 2013)。
Opowerは、実験による効果測定を絶えず行っていて、さらなる改善のために検証を続けている。合理的な測定や検証は、成功のために欠かせない。
本章と続く第13、14章では、プロダクトの現状を測定し、将来の効果改善を行うために欠くことのできない道具を提供したい。
誰でも効果は測れる
この章の題を見て、難解な記号や意味のわからない数式をイメージしたのではないか。ここではそんなものは出てこない。その代わりに、ごくごくありきたりなプロダクト効果の測定方法を説明しよう。 ...
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