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UX戦略とは何か

森のなかの分かれ道。どちらに行ったら

いいだろうか。通った人が少ない方を選んだ。

その選択のおかげで大きな違いが生まれた。*1

──ロバート・フロスト

 去年のことだが、ワークショップのプランニングで助けを求めてきた同僚と日曜の午後に打ち合わせをしたあと、私はとても機嫌が悪かった。週末に仕事をするなんてと思っていたからだろうか。ロサンゼルスのイーストサイドからウエストサイドへの移動はいつも最悪だからだろうか。それとも、CxOの肩書を持つ重役たちのために栄えあるブレーンストーミングセッションをリードすることを考えるとどうにも憂鬱だったからだろうか。理由は何であれ、もっと機嫌が悪くなるようなことが起きた。後続車にひどい勢いで追突されたのだ。アルミホイルで包んだ食べかけのブリトーが後部座席から吹っ飛んでフロントガラスにべちゃっと貼りついたぐらいだ。

 安全な事故処理のために、相手ドライバーと私はすぐに渋滞しているフリーウェイから住宅地の通りに下りた。私の車はひどい衝撃のためにガソリンタンクが外れていた。幸い、どちらにも怪我はなかった。相手ドライバーは保険に入っており、申し訳なさそうにさえしていた。まったくの赤の他人と道端に立っている気分がどうであれ、次の課題は保険会社の事故受付との初めてのやり取りだということはわかっていた。私の保険会社は、テクノロジーを活用した先進的な自動車保険企業として知られるMetromile*2だ。

 Metromileは、サンフランシスコに本社を置く中規模のスタートアップだ。イノベーティブなビジネスモデルとテレマティクス(移動体通信システム)の利用によって自動車保険業界の破壊を目論んでいる。年間契約の固定料金ではなく、月払いの安い基本料と走行距離に基づく(ペイパーマイル)従量制料金を取る。私はロサンゼルスに住んでいるが、フルタイムの仕事のために毎日通勤するわけではないので、それほど車には乗らない。そこで、旧来の保険会社からこの業界破壊を進めるハイテク企業に乗り換えたら、月々の支払いがどれだけ安くなるかを計算してみた。2018年のことだ。契約から数日後、小さな無線デバイス、Metromile ...

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