3章
最初のバリュープロポジションの定義
ビジネスとは何かを知るためには、ビジネスの目的から考えなければならない。
ビジネスの目的は、ビジネス自体の外側になければならない。
そして、営利企業は社会のなかの機関なので、
ビジネスの目的は社会のなかになければならない。
すると、ビジネスの目的の正しい定義はひとつだけに絞られる。
顧客を作り出すことだ。*1
──ピーター・ドラッカー(経営学者)、1973
最初に言っておくが、ソリューションはほかのものと無関係に定義されるわけではない。まず、どのような問題を解決するのか、どのような顧客ニーズをもっともよく解決すべきなのかをはっきりさせる必要がある。明らかにしなければならないことは多く、ひとつでも間違えると、ソリューションは妄想に変わってしまう。そこで、「基本要素1:ビジネス戦略」と「基本要素3:検証をともなうユーザー調査」を掘り下げて、地に足が着いた状態を保つようにしていく([図3–1]参照。UX戦略の4つの基本要素については、2章参照)。この章では、バリュープロポジションの作り方を学ぶ。バリュープロポジションは不思議な魅力を持ち、顧客がそれを感じ取れるようなものでなければならない。そして、顧客が誰か、彼らがバリュープロポジションを強く必要とし、望んでいるかを知るために顧客発見プロセスを実施する。
3.1 | 大物プロデューサーのバリュープロポジション
私は中学2年生の頃、よく胃が痛いふりをした。すると、母は仕事場に私を連れて行ってくれるのだった。母はバーバンク映画スタジオの弁護士の秘書だった。私は舞台裏を歩きまわったり、セットの陰に隠れたり、クルーの人々がテレビ番組や映画を撮影しているところを見るのが好きだった。まるで夢の国を歩いているようだった。1978年の若かった私には、映画やテレビよりもかっこいい仕事は想像できなかった。だから、2012年の大人になった私は、同じ撮影所のバンガローで大物プロデューサーが私とのミーティングを設定したときにはとても興奮した。彼は、プロダクトのアイデアに「脈がある」かどうかを私に相談してきた。 ...
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