あとがき

第2版を書いた今でも、機械学習を取り巻く環境は目まぐるしく絶え間なく変化し続けています。筆者の一人である有賀がこの本の最初の執筆を開始した2015年から6年以上、初版が出版されてから4年以上経っているのですが、初版出版後からも機械学習にまつわる大きな変化は続いています。深層学習の名は、一般まで届くようになり、DeepFakeと呼ばれる映像を合成する技術は推理ドラマの題材としてもおなじみです。TensorFlowそしてKerasの勢いは伸び、Define-by-Runと呼ばれる概念を打ち立てたChainerは開発を停止しPyTorchへと合流しました。iPhoneやPixelなどのスマートフォンのカメラで撮られる画像は、深層学習を用いたボケの適用など機械学習は私達の生活を裏側から支えています。YouTubeのような大手だけではなくTwitchのような新興のライブ動画配信サービスに対しても、大量の動画から違法に利用された音楽の検知をレコード会社が求めるといった事件もありました。今や、機械学習はデジタルなコンテンツやデバイスがなくてはならないのと同じくらい、当たり前の存在です。

こうした中で、本書の執筆に取り組み続けていたのは、何度も同僚やお客様から機械学習の似たような質問を受けるたびに、既存の理論寄りの書籍やハンズオン系の書籍ではカバーできていないけれど、業務の中では皆知っているべきことがたくさんあるのではないか、と思い続けてきたからです。また、幸運にも初版を多くの人に手にとってもらって、「機械学習でいい感じにしてくれ、と上司に言われたので助かりました」という声もいただきました。一方で、機械学習が普及したが故にをそれ含むシステムや問題に取り組む上で立ち向かわなければならない、因果効果推論や継続的トレーニング、機械学習基盤の運用など新たな挑戦も多くの人が目の当たりにするようになりました。機械学習システムはさまざまなロールや組織体制のなか、データという不確実なものから生成される結果を、設計や運用含めてハンドリングしていかなければなりません。仮説をどのように立てるか、探索的な分析をどうするのか、普段のソフトウェアの開発と異なる難しさはなにか、といった私たちが暗黙的に経験として学んできたことがまだまだ知られていないのではないかと思っています。この本を読むことで私たちが普段の取り組みを通じてためてきた知見をお伝えしたかったからです。あまりこういったトピックに触れる機会がない独学で進んできた方にとって、本書が業務で機械学習を活用する上での一助となれば幸いです。 ...