監訳者まえがき
おそらく本書の読者であればこれまでに1度くらい「データはこれからの時代の新しい石油である」といった言葉を耳にしたことがあるだろう。20世紀という時代には石油が大きな価値と社会的影響を持ったのと同様、21世紀にはデータが大きな価値と社会的影響を持つというのだ。私の知る限り、世界で最初にこうした表現をしたのはイギリス生まれのデータサイエンティストであるクライヴ・ハンビーであり、少なくとも彼は2006年時点でそう発言していたとのことなので、もはやそれほど斬新なアイディアというわけでもないが、今でも色んなところで見かける表現である†1。
個人的に「データはこれからの時代の新しい石油である」という考え方には賛成なのだが、できればここに「良くも悪くも」という言葉を付け加えておきたい。データは確かに石油同様に大きな価値と影響力を持つが、一方で「精製しなければ役に立たない」「外に垂れ流すと迷惑」「取り扱いを間違えると大炎上」という点も石油と同様である。内燃機関や石油化学などの技術によって石油は大きな価値を生むが、ほんの150年ほど前のそうした技術が未発達な時代には「クジラの油脂の代わりにランプを灯すためのもの」といった限られた価値の生み方しか存在していなかったそうだ。
かつて世界的に「ビッグデータ」という言葉が着目されていた時代には、とにかく大量のデータを集めようとか、使い方はよくわからないままとにかくデータを売り買いしようといった新規事業が散見されたが、最近そうした動きはめっきり見なくなった。おそらく多くのビジネスマンが、データという新たな石油の潜在的な価値を現実的な利益に換えるためには何か足りないものがあることに気づきはじめているのではないだろうか。 ...
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