訳者あとがき
本書は、"Dave Thomas. simplicity: sustainable, humane, and effective software development. Pragmatic Bookshelf, 2025. 979-8888651544" の全訳です。翻訳にあたっては First Release を底本とし、原著の誤記・誤植などについて、一部修正しています。
著者であるDave Thomasは、古典的名著として長く読み継がれてきた『達人プログラマー』の共著者、さまざまな良質な技術書を継続的に世に送り出してきたPragmatic Bookshelfの共同創設者、そして、現代のソフトウェア開発における価値観を方向づけたアジャイルソフトウェア開発宣言の署名者の一人として知られる人物です。また、RubyやElixirの普及への貢献、DRYやコードカタといった考え方の提唱者としても知られ、現代のソフトウェア開発に大きな影響を与えてきた人物の一人と言えます。
そんなDave Thomasが、改訂ではない書き下ろしとして11年ぶりに刊行したのが、本書『simplicity』です。なぜ『simplicity』なのか。それを理解するには、Dave Thomasがどのような問題意識と向き合ってきたのかを辿る必要があります。
Agileではなくagility
2010年代に入って以降、Dave Thomasが抱いていたのは、ソフトウェア開発が本来持っている難しさ以上に、私たちがそれを自分で煩雑にしてしまっていることに対する違和感でした。開発をよくするための考え方であったはずのアジャイルは、いつの間にか、現場の判断や学習を支えるものというより、研修や認証や定型的なプラクティスを束ねる業界用語のようになってしまった。Dave ...
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