2章CHAOSレポート再考
私と同じような経験の持ち主なら、たいていのソフトウェアの作り方や保守の仕方はどこか間違っていることはわかっているだろう。だが、その結論を導く確たる事実を発見できずにいる。もしデータがなければ、レガシーコードはビジネスのコストの問題ではなくビジネスそのものを脅かす危機であることを、同僚やマネージャーに認めてもらうのは難しいだろう。だが、ソフトウェアプロジェクトの失敗を避けたいなら、これらの重要な問題から目を背けてはいられない。
ソフトウェアはまだ研究や調査が足りていない業界だ。ほかのすべての産業にソフトウェアが与える影響を考えれば、研究や調査がかなり不足していることがわかる。スタンディッシュグループ†1は、歴史が浅くて、複雑で、混沌としたこの業界を、少なくとも理解しようとしている。彼らの集めたデータではすべてを説明することはできないことは認めながらも、この業界のプロジェクト成功率は決して高くないことを示したのだ。
自分が参加したプロジェクトが苦難にあえいでいたこともある。失敗したこともある。しかし、業界全体が同じような危機的状況にあり、ソフトウェア開発プロセスが壊れている中で、毎年何十億ドルも損失を出していようとは、まったく考えたことはなかった。だが、世界最大級のソフトウェア会社にアドバイスをする立場になって、自分の経験がどれほどありがちなのかを調べたいと思った。そこで、業界最大で、いちばん期待されていて、いちばん多く引用される調査を調べることにした。スタンディッシュグループのCHAOSレポートだ。
[†1] http://www.standishgroup.com
2.1 CHAOSレポート
スタンディッシュグループは、ソフトウェア業界を対象とする調査機関である。CHAOSレポートというわかりやすい名前がついた彼らの調査では、広範囲のソフトウェア開発の成功率をさまざまな指標から評価している。調査は34,000プロジェクトが対象となっており、パッケージソフトウェア、OSから、カスタム開発のソフトウェア、組み込みシステムまでさまざまなプロジェクトが含まれている。10年間にわたる調査では、さまざまなスポンサーのさまざまなソフトウェア開発プロジェクトが対象とされた。毎年、10年前から追跡していたプロジェクトのうち3,400プロジェクトを調査対象から除外し、新たに3,400の新規プロジェクトを対象に加えている。 ...
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