監訳者まえがき
本書はPatrick Viafore著『Robust Python』の全訳である。
学生時代、セミナー中に恩師である石上嘉康先生から「書籍というのは、筆者との時空を超えた対話である」という旨の話を聞いた。もしかしたら先生からではなく同じ時期に読んだ書籍の一節かもしれないが、私の中ではそのような形で記憶している。セミナーで読んだ書籍はその分野で古典と呼ばれるものであり、数十年の時空を隔てて、筆者が何を言わんとしているのかを理解するために格闘していた。プログラミングもまた時空を超えた作者との対話である。コードは計算機のための言葉であるが、それと同時にそれを読む人のための言葉でもある。それを読むのは同僚かもしれないし、未来の自分かもしれない。ある日、北極圏を探る異星の探検家が地下に保存されたコードを発見してそれを読みふける可能性もあるのだ。
Python自身にもコード上における対話を想定した機能を備える。型ヒントである。2008年にPython 3.0がリリースされ、PEP 3107として関数の引数と返り値のアノテーションが導入された。Python 3.5からPEP 484としてアノテーションに型ヒントという意味が与えられた。以降、バージョンが更新されるたびに型ヒントに関する機能が充実していった。これからもしばらくは拡張と改善が続くだろう。しかし、型ヒントに関する機能が充実しても自分が関わるコードベースが改善されるわけではない。型ヒントが存在するから、Python言語の開発者が頑張って型ヒントを充実させてくれるからコードベースが改善されるわけではない。それが存在するから正しくプログラミングできるのではなく、それをうまく使う方法を知らなければならない。Pythonの型ヒントに関して、それ自体の理解だけでなく、それをどのように自分のプロジェクトで活用するか、という視点が欠けていたのではないだろうか。『ロバストPython』はその欠けていたピースを埋めるべく登場した書籍である。 ...
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